職業訓練校は、再就職やキャリアチェンジを目指す人にとって魅力的な選択肢のひとつです。
しかし「本当に通う意味はあるの?」「行って後悔しない?」と疑問に感じる人も少なくありません。
実際、訓練内容や通う目的によっては期待した効果を得られず、時間と労力が無駄になってしまうケースもあります。
本記事では、職業訓練の基本的な仕組みから「職業訓練校は行かない方が良い」と言われる理由、通うメリット・デメリットまで徹底的に解説します。
通うか迷っている人、転職のためのスキルアップを目指している人は、ぜひ判断材料として参考にしてください。
職業訓練とは?
職業訓練とは、求職者や転職希望者を対象に再就職・スキルアップを支援する公的な教育訓練制度です。
ハローワークと連携して実施されることが多く、失業給付などのサポートを受けながら専門的な知識や技術を習得できるのが特徴です。
職業訓練には大きく分けて「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があり、それぞれ対象者や訓練内容、サポート体制に違いがあります。
- 公共職業訓練
- 求職者支援訓練
公共職業訓練
公共職業訓練は、雇用保険の受給資格を持つ離職者を対象にした再就職支援制度です。
公共職業訓練を受けるには、以下4つの条件をすべて満たしたうえで、職業訓練校の選考試験に合格する必要があります。
- 失業保険の給付日数が1/3以上残っている人
- ハローワークから受講指示を受けた人
- 過去1年間に職業訓練校の退学処分を受けていない人
- 前回の職業訓練終了から1年以上経過している人
訓練内容はパソコンスキルや簿記、介護、製造業技術など多岐にわたり、訓練校は都道府県や独立行政法人などが運営します。
公共職業訓練期間中は雇用保険(基本手当)が支給されるため、生活費の心配をせずに学習に集中できるのが大きなメリットです。
求職者支援訓練
求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない求職者を対象にした職業訓練制度です。
非正規や無職などの失業手当を受けられない人でも、以下の条件を満たせば受講できます。
- 雇用保険の失業手当の受給期間が終了した人
- 雇用保険に加入していない人(アルバイト、パートタイムなど)
- ブランクのある専業主婦(主夫)
- 自営業・フリーランスを廃業した人
- 就職先が決まらないまま学校を卒業した人
公共職業訓練と同様に受講料は基本的に無料で、求職者支援訓練を受講するには選考試験に合格する必要があります。
求職者支援訓練は民間の教育機関が運営するケースが多く、Webデザインやプログラミング、医療事務など、比較的ソフトスキル系の講座が中心です。
職業訓練は行かない方が良いと言われる理由・デメリット
職業訓練校は失業中の再就職支援やスキルアップに役立つ場として知られていますが、「行かない方が良い」との声も存在します。
実際に受講してみて期待と現実のギャップに悩んだり、就職に結びつかなかったりしたケースは少なくありません。
ここでは、職業訓練に対するネガティブな意見や、通う前に知っておきたいデメリットや注意点を紹介します。
職業訓練を受けても就職が難しい
職業訓練を受けたからといって、必ずしも希望の仕事に就けるとは限りません。
企業側は実務経験を重視するため、未経験から転職を目指す場合は書類選考や面接で不利になりやすいです。
ほかにも年齢や地域の求人状況が影響するため、実際に職業訓練を受けた人からは「資格を取ったのに採用されない」という声もあります。
特に訓練で習得したスキルが実務に即していない、または企業のニーズとズレていると、就職活動が長期化しやすくなる点に注意が必要です。
すぐに就職できない
職業訓練を受ける期間は3〜6ヶ月と比較的長いため、就職活動のタイミングが後ろ倒しになります。
訓練後に本格的な就職活動を始めると、さらに数ヶ月ほどかかることも珍しくありません。
また訓練中は週5日フルタイムで通学が必要なことも多く、アルバイトとの両立も難しくなります。
生活費に余裕がない人にとっては、ブランク期間が精神的にも経済的にも負担となるため、「時間をかけた割に成果が出ない」と感じやすいです。
応用知識や技術を学べない
職業訓練で教えられる内容は、あくまで初心者向けの基礎知識であり、専門的かつ高度なスキルは学べません。
たとえばプログラミングやWebデザインなどの講座も、HTMLやCSS、JavaScriptの初歩的な部分に限定されています。
実践的なスキルや応用技術まで網羅している講座は稀なので、「市販の教材レベルだった」と感じる人も多いです。
希望の講座を受講できないこともある
職業訓練校では人気のある講座(プログラミング・事務・医療系など)に応募者が集中し、抽選や選考に通らなければ受講できないことがあります。
地域や時期によっては、希望する分野の講座がそもそも存在しない場合もあります。
また訓練実施機関の都合や定員制により選択肢が限られるため、「行かない方が良い」と言われてしまうのです。
ブラック企業を紹介される可能性がある
職業訓練後に紹介される企業が必ずしもホワイト企業とは限りません。
ハローワークの求人掲載は審査が比較的緩いため、ブラックな労働環境の企業も混在しています。
特に人手不足の業界や未経験歓迎求人には、離職率の高い企業が紛れているため要注意です。
電話やメールで追跡調査がおこなわれる
職業訓練を受講すると、訓練校やハローワークから受講後の就職状況に関する連絡がきます。
受講後の連絡は職業訓練の成果を測定するために実施されているものですが、頻繁な電話やメールに「しつこい」と感じる人も少なくありません。
また就職できていないことを何度も聞かれるのがストレスになったり、状況を逐一報告することにプレッシャーを感じてしまったりすることもあります。
就職支援を打ち切られることがある
職業訓練を終えてから未就職の状態が3ヶ月続くと就職支援が打ち切られます。
訓練期間中に明確な就職活動の意思が見られない場合や、ハローワークの指示に従わない行動が続いた場合も、就職支援や給付金の打ち切り対象となることがあります。
せっかく訓練を終えても十分な支援を受けられないことから「行かない方が良い」という意見が出るのです。
大手エージェントのリクルートエージェントはサポートの質に定評があるため、就職活動を効率よく進められます。
職業訓練に行くメリット
職業訓練校は「行かない方が良い」という意見もありますが、訓練校に通うメリットも多数あります。
特に再就職を目指す人や新しいスキルを身につけたい人、失業中や転職活動中の人には、費用面や学習環境、就職支援の手厚さなど多くのメリットが存在します。
無料で専門知識を得られる
職業訓練は国や自治体が訓練費用を負担しているため、基本的に受講料は無料です。
テキスト代や材料費のみの負担で済むため、実践的なスキルや専門知識を金銭的負担なく学べます。
専門学校や民間スクールと比べて大幅にコストを抑えられるので、「スキルを学び直したいけれどお金がない」という人に適しています。
一定の要件を満たせば給付金を受け取れる
雇用保険の受給資格があれば、職業訓練中に「雇用保険」や「職業訓練受講給付金」などの給付金を受け取れる可能性があります。
- 基本手当:離職前の賃金に応じて支給額が異なる
- 受講手当:日額500円(上限あり)
- 通所手当:通所方法により支給額が異なる(上限あり)
- 職業訓練受講手当:月額10万円
- 通所手当:通所方法により支給額が異なる(上限あり)
職業訓練受講給付金は雇用保険を受け取れない人も対象になる制度で、月額10万円の生活支援金に加え、通所交通費なども支給されます。
そのため、経済的に困窮していても安心して学習に集中できます。
資格取得を目指せるコースがある
多くの職業訓練コースでは、履歴書に記載できる資格の取得を目指せるカリキュラムが組まれています。
- 日商簿記
- MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
- 介護職員初任者研修
- 医療事務技能審査試験
- Webデザイン技能検定
資格取得を通じて自身のスキルを証明できるため、未経験からキャリアチェンジを目指す人には大きな武器となります。
また講座内で模擬試験や試験対策がおこなわれる場合も多く、独学よりも効率的かつ確実に合格を目指せる点もメリットです。
就職支援を受けられる
職業訓練には、訓練期間中および修了後の就職支援サービスが含まれています。
- キャリアコンサルタントとの面談(キャリアカウンセリング)
- 履歴書・職務経歴書の添削
- 模擬面接の実施
- 求人紹介
職業訓練校やハローワークでは支援体制が充実しており、手厚いサポートを受けられる点が魅力です。
再就職支援に力を入れている訓練校では、企業とのマッチングイベントや合同説明会なども開催されており、就職のチャンスが広がります。
失業給付を早めに受け取れる
職業訓練中は「特例措置」により、待期期間を短縮して失業給付を受け取ることが可能です。
通常、失業給付は「待機期間+1ヶ月の給付制限期間」を経てから受け取ります。
しかし、公共職業訓練を受講すれば給付制限期間が解除され、失業給付の受給開始が早まるのです。
通常よりも早く失業給付を受け取れれば、経済的な不安が軽減され、学習や就職活動に集中できます。
一緒に学ぶ仲間ができる
職業訓練校は集団授業形式のため、同じ目標を持つ仲間と一緒に学べます。
交流の機会が自然と生まれやすいので、励まし合いながらモチベーションを維持しやすくなるのが特徴です。
また年齢や職歴、バックグラウンドが異なる人々と接することで視野が広がり、意外なところから人脈が広がって就職のチャンスが広がることもあります。
職業訓練は行かない方が良い人の特徴
職業訓練には多くのメリットがありますが、誰にとっても最適な選択肢とは限りません。
人によっては訓練の内容や就職支援が期待と異なる場合もあり、逆に時間や労力を無駄にしてしまうリスクもあります。
職業訓練に通わない方が良い人の特徴は、以下の3つです。
すぐに就職したい人
職業訓練は一定期間の学習を経てから就職を目指す仕組みのため、すぐに働き始めたい人には不向きです。
訓練期間は数ヶ月に及ぶことが多く、その間はフルタイムで通学が必要になるケースもあります。
訓練期間中は就職活動を優先できないため、即時就職を目指す人やすぐに収入を得たい人にはかえって遠回りです。
訓練修了後に希望通りの職に就ける保証もないので、短期間で安定収入を得たい人は就職活動を進めるほうが現実的です。
やりたい仕事や目的が曖昧な人
職業訓練は特定職種・業界を目指す人を対象にした専門的な内容が多いため、明確な目標がない人には方向性を見失いやすい傾向があります。
「なんとなく就職に有利そうだから」「周りが通っているから」といった曖昧な理由で参加すると、学習意欲が続かず、途中で挫折してしまうリスクもあります。
目的が不明確だと講座選びにも失敗しやすくなり、せっかく時間と労力をかけても就職にはつながらず、後悔する結果になりかねません。
給付金目当ての人
職業訓練で支給される「職業訓練受講給付金」などを目的に訓練を受けるのはおすすめできません。
給付金の支給には、出席率や就職活動の実施など厳格な条件が設けられており、不適切な目的で通うと不正受給とみなされます。
実態調査や受講態度によっては給付打ち切りや返還の対象になる場合もあり、リスクは大きいです。
お金がほしいだけなら、職業訓練には行かずに、早期の就職を目指すほうが得策です。
職業訓練に行った方が良い人の特徴
職業訓練は正しく活用すれば、将来のキャリア形成や再就職の大きな後押しになります。
費用面のハードルが低く、未経験分野へのチャレンジにも適しているため、以下の条件に当てはまる人には理想的な制度といえます。
お金をかけずに学びたい人
職業訓練は公費で受講できるため、費用をかけずにスキルアップしたい人に向いています。
通常なら数十万円かかるような講座内容も、公共訓練や求職者支援訓練であれば授業料無料、テキスト代や材料費のみの負担で受講できます。
学び直しやキャリアチェンジを考えているものの、予算面で専門学校やスクールの利用が難しい人にとって、職業訓練は魅力的な選択肢です。
未経験の職種にチャレンジしたい人
職業訓練では基礎から学べる講座が多く、これまで関わったことのない業界への転職を目指す人には安心してスタートを切れる環境です。
- IT
- 医療事務
- 介護
- 建築
- 製造
- 販売 など
幅広い分野のコースが用意されており、訓練終了後は修了証が発行されます。
資格を取得したい人
職業訓練では、就職に有利な資格取得を目指せるコースが多数存在します。
- 簿記
- MOS
- 医療事務
- 介護職員初任者研修
- CAD
- ウェブデザイン など
自主学習が苦手な人
1人で計画を立てて勉強するのが苦手な人には、職業訓練が適しています。
職業訓練校は通学形式の集団授業で講師に質問できるため、挫折しにくく、仲間や講師のサポートも得られます。
仲間の存在が大きな支えになるため、自主学習で挫折した経験がある人には特におすすめです。
毎日通うことで学習の習慣が身につき、モチベーション維持にもつながりますよ。
後悔しない職業訓練校の選び方
職業訓練校は再就職やキャリアチェンジに役立つ一方で、選び方を間違えると「時間の無駄だった」と後悔しがちです。
希望の職業に近づくためには、自分に合った訓練校やコースを見極めることが重要です。
ここでは、後悔しない職業訓練校の選び方を詳しく解説します。
自分のやりたいことや将来の働き方を明確にする
職業訓練校を選ぶ前に、まず「自分が何を学びたいのか」「どのような仕事を目指しているのか」を明確にすることが大切です。
たとえば、IT系のスキルを身につけて在宅ワークをしたいのか、介護職に就いて安定した収入を得たいのかによって選ぶべきコースは大きく変わります。
目標が曖昧なまま選ぶと学ぶ内容に興味が持てず、途中で挫折してしまう可能性もあります。
時間と労力を無駄にしないためにも、自分が何をしたいのかを考えることが大切です。
授業カリキュラムや目指せる職業を事前に確認する
職業訓練の内容は訓練校ごとに異なるため、実務に直結した内容かを見極めることが大切です。
たとえば、同じWebデザインコースでも、PhotoshopやIllustratorの基礎に重点を置く学校もあれば、HTML・CSS・JavaScriptを中心に学ぶ学校もあります。
また卒業後に就職できる職種も変わるため、自分の希望するキャリアとマッチしているかを確認する必要があります。
可能であれば、過去の就職実績や就職先企業の情報もチェックして、目的に合った訓練内容かどうかを判断しましょう。
自分に合ったコースを選ぶ
無理なく学習を続けるためには、自分の生活スタイルや学習ペースに合ったコースを選ぶことが重要です。
訓練校には短期集中型の講座から半年以上にわたる長期講座まで、さまざまなコースがあります。
たとえば家族の世話やアルバイトとの両立が必要な人には、通学日数が少ないコースやオンライン対応の講座が向いています。
一方で、就職に直結する資格を取得したい場合は、フルタイムでじっくり学べる内容が望ましいです。
職業訓練校の説明会や見学会に行く
パンフレットやウェブサイトだけでは分からない情報を得るには、訓練校の説明会や見学会への参加が効果的です。
実際の教室の雰囲気や設備、講師の話し方や対応などを見てから申し込むと、公式案内だけでは見えない情報を事前に把握でき、失敗を防げます。
また疑問点を直接質問できる機会でもあり、「未経験でもついていけるか」「就職支援の具体的な内容は?」といった不安を解消できます。
職業訓練以外で再就職に活用できるサービス
職業訓練以外にも、再就職に活用できる公的・民間の支援サービスは複数あります。
自分の状況や目的に応じて柔軟に活用することが、再就職成功のカギとなります。ハローワーク
ハローワークは全国に設置されている公共職業安定所であり、無料で職業紹介や相談支援を受けられます。
求人数が非常に多く、地域密着型の求人も豊富に取り扱っているため、地元での就職を希望する人には特に有効です。
職業相談ではキャリアアドバイザーが個別対応してくれるので、履歴書の書き方や面接対策などのサポートも受けられます。
転職サイト
転職サイトは、求人情報を自分で探して応募するスタイルのサービスです。
- 自分で求人を探して応募できる
- 多数の求人を一度に検索できる
- 履歴書作成ツールなどが充実している
転職サイトでは業界や職種別に求人を検索しやすく、企業の口コミなども閲覧できます。
スカウト機能を活用すれば、企業側から直接オファーが来ることもあり、効率よく転職活動を進めたい人に向いています。
登録・利用は無料で、スマホアプリも充実しているため、空き時間を使って活動できるのも魅力です。
転職エージェント
転職エージェントは、専任のキャリアアドバイザーがつき、求人紹介から応募、面接対策、条件交渉まで一貫してサポートしてくれます。
- キャリアアドバイザーが希望に合った求人を紹介
- 応募書類の添削や面接対策など手厚いサポートを実施
- 面接日程の調整、条件交渉などを代行
自分の適性や市場価値を客観的に教えてくれるため、キャリアの棚卸しにも役立ちます。
以下は転職エージェントに関して詳しく解説した記事です。ぜひご覧ください。
職業訓練と並行して登録することで、より多くの選択肢を持つことができ、効率的に再就職活動を進めることが可能です。
正社員としての就職を目指す人や、希望条件が明確な人にとっては非常に頼れる存在です。
職業訓練によくある質問
職業訓練校によくある疑問と回答をまとめました。
すでにWordやExcelをある程度使える人にとっては、初級レベルの内容は物足りなく感じるかもしれません。
しかし、基礎スキルがない人やブランクがある人には、体系的に学び直せる良い機会になります。
職業訓練は国が主導する再就職支援制度で、多くの人が転職・再就職のために利用しているものであり、社会的にも一般的な手段になっています。
年齢層も20代〜50代以上と幅広く、さまざまな事情を持った人たちが集まっており、同じような悩みを共有しながら学べる環境があります。
職業訓練での学びを活かして再就職に成功した事例も数多くあり、転職を有利に進める手段として効果的です。
訓練出席率は修了や給付条件に関わるため、無断欠席は避けるべきです。
ただし体調不良や家庭の事情などのやむを得ない理由がある場合は、事前に連絡すれば欠席扱いにはならないこともあります。
訓練校ごとに欠席可能日数の上限や補講制度が定められているので、事前に説明会などで確認しておくと安心です。


























